ディベートガイドと論点整理

・ガイド ……アフガン攻撃 核兵器廃絶 クローン人間 
・論点整理……アフガン攻撃 核兵器廃絶

※ディベートガイドは、ディベート学習の準備に役立てるために肯定側と否定側の論点を参考に提示したものである。あわせて、論争が本来の議論からはずれないように、論題の定義によって基本方向を指示している。
◎これは2001年実施のものである。

ガイド
アメリカは、アフガン攻撃をやめるべきである

【論題の定義】
 オサマ・ビンラディンとテロ組織アルカイダの9.11テロ攻撃を理由に、彼らを匿っているアフガニスタンのタリバン政権に対して10.7から軍事攻撃が始まった。
 肯定側は、この攻撃を不当なものとして中止を求める。否定側は、アメリカの軍事行動をすべて認める必要はないが、攻撃自体はやむをえないものとして肯定する。ここでは、特に事情がない限り、9.11テロ攻撃はビンラディンとアルカイダが行ったことを前提にする。
【肯定側参考論点】
<現状の問題点>
a)都市への不法な軍事攻撃で、無関係な多数の一般市民が犠牲になっている。
b)戦争はイスラム教徒の憎しみを高めて、<報復が報復を呼ぶ>悪循環に陥るだけ。
<プラン/提案内容>
c)軍事攻撃を中止し、証拠を示して、外交交渉でタリバンに犯人引渡を求める。
d)中東政策全体を見直して、パレスチナ問題の解決とアフガン復興の支援に努める。
<メリット/提案の利点>
e)犠牲者を出さず反米感情を高めないので、建設的な外交交渉で問題を解決可能。
f)イスラム教徒が「アメリカ対イスラム」と考えず、ラディンの狙い通りにならない。
g)新中東政策で親米感情を育て、テロ支援の活動を抑えてテロ攻撃を抑止できる。
【否定側参考論点】
<現状の意義>
a)アメリカの自衛権行使は当然。反撃対象が軍事拠点で、ミスによる市民被害は少ない。
b)ブッシュは「テロとの戦い」と言い、イスラムへの憎悪が広がらない配慮している。
<反対プラン/提案内容>
c)軍事攻撃を続行する。ただし、一般市民への被害への補償を約束する。
d)中東問題の解決に一層努力し、アフガン難民への国際支援が容易になるよう配慮する。
<デメリット/肯定側提案の欠点、否定側の提案の利点>
e)引渡交渉が十分に行われていた。タリバンは引渡に応じないので問題解決にならない。
f)テロリストはイスラエル抹殺を主張、中東問題解決がテロ中止に結びつくことはない。
g)アフガンに平和的政府を樹立すれば「イスラム対アメリカ」の図式に陥らない。

論点整理
アメリカは、アフガン攻撃をやめるべきである

主な主張    肯定      肯定/否定     否定     戻る       
死亡は1000人、難民増加、テロ組織壊滅難しい。地雷タイプ爆弾使う。救援を狭くしているアメリカ。空爆終わらないと難民減らない 1組26/1 反撃対象は軍事拠点、テロとの闘い、被害市民へ補償を。被害はニセ情報解放されて喜ぶ市民。テロリスト野放しにできない。
誤爆、潜伏地以外の攻撃意味なし、アフガン復興。命中率85%。100人死亡の村。あまりに早い攻撃。巻き添えに反発生まれるだけ。 2組10/18 話合い解決不可能。攻撃中止でアフガン政治不安、テロが正当化される。イスラムを攻めず。被害最小限の手段。中止すると混乱広がる。経済制裁被害が大
無関係市民の犠牲、報復呼ぶ悪循環、パレスチナ問題解決とアフガン復興、交渉で引 渡を。ゲリラ戦で農民殺害に弱い者いじめ、確実な証拠をすべき。 3組16/16 計画的犯行で大ダメージ攻撃当然、難民支援あり、引渡応じず、攻撃中止はテロ認める。イスラム国難民受け入れずテロ前にパレスチナ話合を、潔白示せ。
民間人に被害、憎しみを高め悪循環、外交交渉/パレスチナ公正解決、イラク経済制裁中止。口実をなくす。証拠出さず横暴。第2のラディン現れる。 4組29/3 引渡交渉に応じず、宗教問題の対立、女性蔑視。ラディン攻撃でテロの根源を絶つ。やり返してから話し合い。ラディンは要求なし、外交は不可能。
軍事施設攻撃は嘘、難民支援できていない。アフガン人軽視で、米国攻撃 はテロと同じ。米国は証拠出していない。警戒すればテロ防げる。 5組18/7 自衛権行使当然、テロとの闘い、市民被害最小限に。予告なしがテロ、米国攻撃は違う。引き渡せば攻撃しない。テロを野放しでいいのか。
新戦争の火種、無関係市民の犠牲、外交でラディンを追い詰め。イスラム社会でラディンが英雄、新しい指導者現れる。警察を強化してテロを防げる 6組16 /14 何もしないは被害者に悪い、反撃なしでやられる、話し合いで引渡無理。テロ組織をつぶす。イスラムとの闘いと言わず、いずれ冷静に気づく。
交渉による犯人引渡。誤爆あり、憎しみを高める。反米感情を高めないで解決。関係ない市民巻き込みはテロと同じ。イスラム教徒は米国のこと信じぬ 7組11/17 自衛権行使当然。テロとの闘い。反撃しなくてもテロリストの攻撃あり。ラディンとらえてアルカイダ弱体化を。誤爆は少ない、タリバンは提案聞かず

●難民は、ソ連侵攻と内戦という歴史から生まれた、今回の攻撃被害と飢饉による難民の危機と区別すること。ラディンの要求はイスラエルの抹殺なので、問題の公正な解決にならない。国際テロ組織の壊滅をどう進めるのか。アフガンがテロリストを匿ったことの評価。

ガイド
核保有国は、核兵器全廃を緊急に実施すべきである    

【論題の定義】                           戻る
「核兵器全廃」は、今ある核兵器を解体・廃棄し将来の生産・開発を禁止すること。国家だけでなくテログループを含めて、核兵器の開発や所有、生産を阻止する体制を整備する。「緊急に実施」とは、早急に国際的合意をまとめて数年のうちに全廃の作業に取りかかること。10−20年後の全廃に向けて核軍縮を進めることではない。
 肯定側は、途上国への核拡散が進んで危険性が高まったので全廃をすぐに実施すべきと主張。否定側は、世界核戦争の危険性はないので、テロを狙う国家や集団への防止強化が緊急であり、その後に全廃が実施できるように話し合いを進めればよいと主張。
【肯定側参考論点】
<現状の問題点>
a)化学・生物兵器の全廃や対人地雷の禁止が決まったのに、大国の核軍縮が進まないため途上国への核拡散が進み、途上国間で核使用の危険性が高まっている。
b)大国が核兵器を保有し技術開発を進める限り、技術が拡散する危険性が高まる。
<プラン/提案内容>
c)核兵器全廃条約を結び、核保有国の廃棄計画とテログループの監視体制をつくる。
<提案の利点/メリット>
d)人類絶滅を防ぐだけでなく、広島の悲劇を将来とも完全になくすことができる。
e)究極兵器の廃棄で、武力による威嚇の効果を減らし外交交渉がより重要になる。
【否定側参考論点】
<現状の問題点>
a)ソ連崩壊で核技術・材料が流出して、テロ国家やテログループによる核兵器による威嚇の危険性が高まっている。核拡散防止とテロ防止を徹底することが緊急である。
b)現在の緊急課題は地域的民族紛争を防止し早期に解決する仕組みをつくることであり、冷戦が終了して戦略核兵器の軍縮が進んだので核兵器全廃は緊急に必要でない。
<反対プラン/反対提案>
c)戦略核兵器の軍縮は進めるが、核全廃はテロ国家・集団の防止体制を強化した後に行う。
<提案の欠点/デメリット、現状の意義>
d)北朝鮮のように核兵器開発の可能性を見せて外交交渉を有利に進められる。テロ防止が強化されないと、核全廃によってこうした動きが強まる危険性がある。
e)核兵器の抑止効果によって、大国間の世界戦争を抑え人類絶滅を防いでいる。

論点整理
世界は、核兵器全廃を緊急に実施すべきである    

主な主張    肯定      肯定/否定     否定     戻る
国連に資料集めて全廃、核廃棄進まない、オーバーキルの状態、テロと各国が協力して戦える。全廃でも同じ効果。クリントンが禁止提案、抑止が効かない相手あり。 1組
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核抑止力は不安定な世の中に必要、核保有国の把握が先決、外交交渉を有利にできる。大国納得しない。使用範囲を決めて凍結、最低限のレベルに。
テログループを含めた合意、使用の危険、絶滅を防ぐ。生物化学兵器禁止された。全廃すれば抑止力不要。地球壊すほど強力でない。個人の核は威力ない。  2組5/23 核抑止力で戦争なし、現状保たれる、核廃絶でタガがはずれて戦争へ。地球破壊になる原発から入手してテログループが核持て、これも廃絶必要。
大国核軍縮進まず途上国で核使用の危険、核の威力が増大。ベトナム戦争など戦争があり、核抑止力がなく軍拡に向かった。テロに核使えない。 3組29/2 全廃した時、ルール違反する国が出ると危険。テロ防止が優先。ビンラディンが使わなかったのは抑止力が働いている。核で均衡保たれている現世界。
大国が廃棄せずに途上国に広がった、人類滅亡。違う武器で抑止のスウェーデン。緊張が切れると危険。保有国と非保有国の対立では? スパイで保有を防ぐ 4組15/18 緊張で平和保つ、安全確保されないと無理、日本は米国の核のかさ。テロ防衛が先決。同盟で防ぐ。一国でも核持てば全廃できず同時廃止できるか
核戦争起きるかも、保有国あればほしがる、テロリストに渡る危険。エシュロンでテロ防げる。威嚇しあうのはニセの平和。自爆に抑止力効かない 5組12/11 交渉を有利にする国あり、条約を破る国、技術流出わかりにくく拡散防止が緊急、抑止力で絶滅を防ぐ。テロリストを抑えるのに必要
テログループ保有すると危険、人類滅亡の危機、途上国で使用の危険。一発でも国滅ぶ、有事に国連が核持つ、今すぐ完了でない。イスラエル核使用の危険あった。 6組9/23 全廃でテロにやられる、抑止力で大戦なし、管理強化を、有事に使える、拡散防止を優先。抑止が機能する少数だけ持つ解体に10年、2000億ドル。 
広島長崎の悲劇繰り返す、放射能汚染広がる、核兵器の平和真の平和でない文明破壊の兵器。協力しあうべき先進国が威嚇は恥。開始を緊急にする。 7組26/0 大国と小国のバランスとれず、一国だけしか武装解除しないとまずい。拡散・テロ防止優先。悪い国に核残り支配される。アメリカで失業者増える。

●緊急全廃の意味を肯定側が定義すること。すでに広まった核兵器技術、現実に兵器製造を防ぐ方法はプルトニウム管理か。テロリストが核ミサイルを持てるか、核兵器の脅威が違うことに注意を。核抑止力の平和が無意味なのか。文明絶滅をどう防ぐか。

ガイド
日本は、クローン人間を認めるべきである

【論題の定義】                            戻る
 論題は、クローン技術で出生した人間でも、他の人間と同様な存在として認めることとする。クローン技術研究を進めていくための人体実験を認めるものではない。
【肯定側参考論点】
<現状の問題点>
a)不妊症の夫婦や同性愛のカップル、また若くして子供を失いそうな親(遺伝病など)など、クローン技術なしでは自分の子孫を残すことができない人達が困っている。
<プラン/提案の内容>
b)クローン技術以外に方法がない場合、誕生する子供の人権が保障されることを前提にクローン人間を認める。そのための研究を認め推進する。
<提案の利点>
c)臓器移植のために、自分に適合する臓器を確保しやすくなる。
d)子供のほしい夫婦にとって、子宮を提供する仮腹の母親(代理母)の問題が解決する。
e)誰か分からない者の精子や卵子を使うよりも、クローン技術で父母、あるいは子供自身の遺伝子を使うほうが倫理的によい。
f)いままでの不妊治療の限界を超える技術として夫婦に喜ばれる。
【否定側参考論点】
<現状の意義>
a)現時点のクローン技術に不十分な点があり、出産やその後の成長での安全性が保証できない。また、クローン技術の悪用が心配されているので、研究そのものが禁止されている。(日本では2001年6月クローン技術規制法が施行)
<反対提案>
b)クローン技術の研究禁止は維持する。臓器移植に関連する、ES細胞の研究のみ厳しいチェック体制のもとで認める。
<デメリット/肯定側提案の欠点>
c)代わりのきく存在として製造されたものだから、自分をかけがえのない存在として感じることができない。(アイデンティティの崩壊)
d)優秀な子供を持ちたいという親の思いなどから、優勢主義を招く可能性がある。また、その子供は自分の優秀な部分しか親に愛されていない(条件付の愛)と感じ不安。
e)臓器移植との関連からクローン技術を不法な目的で使われる可能性がある。
f)クローン人間に対する偏見から、差別を受ける可能性がある。